日本人のアイデンティティー

(第一話)

   思い出がお風呂に関係しているもの、これは日本人なら誰でも持っているものだろう。 子供の頃お風呂に入った時のことを考えてみるとよい。お風呂に関係した思い出を全く持たないという日本人は恐らくいないだろう。お風呂というのはそれほどに日本人に普遍的なものであり、また後で述べるように日本特有の文化なのである。お風呂に関係した思い出があるかないかが日本人のアイデンティティーのひとつだと言っても過言ではないかも知れない。 早い話が日本人に成りすましたスパイを見分けるには子供の頃のお風呂の思い出を尋ねてみればよい。(頭の良いスパイなら最近は自分は帰国子女だと言って逃げるかもしれないが。)

お風呂というものが日本特有の文化/習慣だということは日本人にとって結構意外であるようだ。日本特有の習慣かどうか普通はそんなことを考えたりしていないが、ただなんとなく自分達と同じ人間がお風呂に入らないなどという生活は考えられない(ような気がしている)から世界中の誰もが頻度の違いはあれ何らかの形でお風呂らしきものに入って生活しているように思ってしまっているのだが、実際には肩までお湯に浸かって体を温めるお風呂などというのは全く日本固有の生活習慣であって厳密にいうと世界のどこにもない珍しい習慣なのである。  

 

   地球上には珍しい生き物が沢山いて、いろいろ と珍しい習性を見せて我々人間を楽しませてくれたり もする。日本人の生活習慣にもいろいろと珍しいものが あるのだがこのお風呂というものもまさしく世界の中 ではそういう珍しいもののひとつに数えられるであろう。

 


    昨今では地球のどこに行っても人類が住んでいる。人類が占領していない部分なんてないくらいだ。 陸地だけでなく海の上ですら巨大なやぐらを立てるなどして住んでいる。 日本で発行されている小さな地図や地球儀では普通日本列島は赤い色で示されている。 地球全体の中でこの赤く塗られた小さな部分に住んでいる種類だけがほとんど毎日のようにお風呂に入って生きているのである。 赤く塗られていない部分に住んでいる種類はそんなことはしていないのである。例えそこが寒冷地であってお湯に浸かって身体を温めたら生きるのが快適だろうにと思われる所でも、或いはそこが暑い地方で毎日汗をかくためにでお風呂にでも入ったほうが体を清潔たもてるだろうにと思われるような所でも、日本のように肩まで浸かれるお風呂に入るなどということはしていないのである。

   地球的にみたらこんなに変わった習慣はないのである。とはいえ、非日本人からみたらどのように見えようとも日本人自身にとってお風呂に入るということは誠に素晴らしい快感であり、長寿の秘訣であり、なくてはならない生活必需品なのである。

   こんなにユニークな日本人の生活習慣であるお風呂というものについて、その歴史、健康・美容とのかかわり、世界のお風呂事情、アメリカ人にとってのお風呂等の観点から語って行きたいと思う。ご愛読を。  

鴇田晴幸

バスプロ(株)社長

浴槽設計家・お風呂研究家

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